大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和60年(ワ)81号 判決 1987年1月23日

原告 中野渡静一

被告 桜州運輸株式会社

右代表者代表取締役 中山武四郎

被告 千徳運輸こと 宇野穣

主文

原告の訴えをいずれも却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、各自一一一万五三八〇円及びこれに対する被告桜州運輸株式会社(以下「被告会社」という。)は、昭和六〇年一月一五日から、被告宇野穣(以下「被告宇野」という。)は、昭和六〇年一月二五日から各支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告宇野)

原告の請求を棄却する。

第二主張

(請求原因)

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五九年五月二四日午後四時三〇分ころ

(二) 場所 東京都世田谷区深沢一丁目一二番先交差点

(三) 加害車 普通貨物自動車(横浜一一い五九三〇)

(四) 右運転者 渡辺茂(以下「渡辺」という。)

(五) 被害車 原告所有の普通乗用自動車(品川五八と三六一八)

(六) 右運転者 原告

(七) 事故の態様 被害車が右折のため徐行していたところ、渡辺運転の加害車が追突し、被害車後部を大破させた(以下「本件事故」という。)。

2  責任原因

渡辺は、前方を注視して走行すべき注意義務があるのにこれを怠り本件事故を発生させた過失があり、被告宇野は、渡辺を雇用して、同人を被告会社に派遣し、渡辺は、被告会社の業務の執行中であったから、被告らは、いずれも民法七一五条一項により、原告の後記損害を賠償する責任がある。

3  損害

被害車は、本件事故により後部を大破し、原告は、次のとおりの損害を受けた。

(一) 修理費用 六三万六一〇〇円

被害車の修理のため右金額を支払った。

(二) 代車料(昭和五九年五月二五日から同年六月一一日までのもの) 一八万四一〇〇円

被害車修理期間中の代車料である。

(三) 交通費(昭和五九年五月二五日から同年一二月二〇日までのもの) 三九八〇円

原告は、本件事故により右交通費を支払った。

(四) 請求電話料 二〇〇〇円

(五) 事故等証明書料 一七〇〇円

(六) 検査料 二四〇〇円

(七) 調停申立印紙、切手 五一〇〇円

(八) 日当 八万〇〇〇〇円

(九) 慰藉料 二〇万〇〇〇〇円

合計 一一一万五三八〇円

4  結論

よって、原告は、被告らに対し、各自右損害金一一一万五三八〇円及びこれに対する被告会社は、本件事故発生の日の後である昭和六〇年一月一五日から、被告宇野は、同じく昭和六〇年一月二五日から各支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

理由

一  訴訟の経過

本件訴訟の進行経過は次のとおりである。

原告訴訟提起 昭和六〇年一月九日 当時の被告は、渡辺、被告会社及び被告宇野(以下あわせて「被告ら」という。)の三名

第一回口頭弁論期日二月四日に指定

当事者全員に適法に呼出(被告らには訴状も送達)

1  第一回口頭弁論期日(二月四日)

出席 原告、渡辺及び被告宇野

欠席 被告会社

手続 原告 訴状陳述 渡辺及び被告宇野請求棄却申立

第二回口頭弁論期日二月二一日に指定

原告期日変更申立

第二回口頭弁論期日三月六日に変更

原告のみに適法に呼出(被告らに呼び出ししなかった経緯は記録上明らかではない。)

2  第二回口頭弁論期日(三月六日)

出席 原告、被告宇野

欠席 渡辺及び被告会社

手続 和解勧告

第三回口頭弁論期日三月一二日に指定

当事者全員に適法に呼出

3  第三回口頭弁論期日(三月一二日)

出席 原告、被告宇野

欠席 被告会社

手続 和解打切

第四回口頭弁論期日四月二一日に指定

当事者全員に適法に呼出

4  第四回口頭弁論期日(四月二一日)

出席 なし

手続 休止

原告六月一五日受付の期日指定の申立

第五回口頭弁論期日七月八日に指定

原告及び渡辺に適法に呼出 被告会社及び被告宇野については転居先不明のため不送達

5  第五回口頭弁論期日(七月八日)

出席 原告

欠席 渡辺、被告会社及び被告宇野

手続 裁判官の交代による弁論更新

原告に対し、事実上被告会社及び被告宇野の住所の補正を命じ、原告は、それに応じ、住所の補正をしたとする七月一五日受付の上申書を提出

第六回口頭弁論期日九月二日に指定

原告に適法に呼出 被告らは、いずれも保管期間経過で不送達

裁判所は、保管期間経過という理由で不送達となったものの、右の結果から、原告の上申した被告会社及び被告宇野の住所に疑問を持ったため、事実上再調査を命じたところ、原告は、これに応じず、八月二〇日受付の逮捕拘引による公判出廷強制の申立と題する書面を提出し、被告会社及び被告宇野に対し、住所居所を変えて追及を逃れているという理由で、裁判所に対し、上記の措置を求めてきた。

6  第六回口頭弁論期日(九月二日)

出席 原告

欠席 被告ら

手続 延期

裁判所は、更に、事実上、被告会社及び被告宇野の住所の補正を命じ、次回期日を追って指定とした。

ところが、原告が一向に住所の補正に応じないため、裁判所は、昭和六一年一月一六日付で、正式に原告に対し、被告会社及び被告宇野の住所を二〇日以内に補正するよう命じた(送達は一月二〇日)。第七回口頭弁論期日三月七日に指定

原告は、三月四日受付の上申書で被告会社及び被告宇野の住所を一応補正したが、補正の時期が遅れたため、期日の呼出はできず、原告及び渡辺にのみ適法に呼出

7  第七回口頭弁論期日(昭和六一年三月七日)

出席 原告

欠席 被告ら

手続 渡辺関係を分離し、弁論終結

判決言渡期日 四月二五日に指定(当日一部勝訴判決言渡、渡辺関係確定)

第八回口頭弁論期日四月一一日に指定(被告会社及び被告宇野)

原告の補正した住所は、転居先不明(すでに転居したことが明らかな住民票上の住所地を被告会社代表者の住所として補正してきたものである。)及び宛所にたずね当たらないということで不送達 原告適法に呼出

8  第八回口頭弁論期日(四月一一日)

出席 なし

欠席 原告、被告会社及び被告宇野

手続 なし

期日追って指定

原告渡辺関係 昭和六一年六月九日受付執行分付与申請、同月一二日交付

原告が一向に補正に応じないので、裁判所は再度昭和六一年七月三日付で正式に原告に対し、被告会社及び被告宇野の住所を六〇日以内に補正するよう命じた(送達は七月七日)。

第九回口頭弁論期日一〇月三日に指定

原告が住所の補正に応じないので被告会社及び被告宇野には送達できず、原告には適法に呼出

9  第九回口頭弁論期日(一〇月三日)

出席 原告

欠席 被告会社及び被告宇野

裁判所は、補正命令にしたがい住所の補正を命じたことにつきその趣旨をあらためて説明するとともに、調査をつくした上で、判明しない場合に公示送達の手続きがあることも説明したところ、原告は、公示送達の手続き自体を知っている旨回答した。

裁判所は、補正命令の回答期間を事実上次回口頭弁論期日まで待つから、更に調査するよう伝えた。

第一〇回口頭弁論期日一二月一八日に指定

原告が住所の補正に応じないので被告らには送達できず、原告には適法に呼出

10  第一〇回口頭弁論期日(一二月一八日)

出席 なし

欠席 原告、被告会社及び被告宇野

手続 弁論終結

判決言渡期日 昭和六二年一月二三日に指定

右の経過に徴すると、原告は、訴訟継続中に被告会社及び被告宇野が転居したという事情はあるものの、裁判所が被告会社及び被告宇野の住所の補正を正式に命じたにもかかわらず、それに対して応答をせず、更に、それ以前の裁判所の正式、事実上の補正命令に対し、おざなりの調査しかしなかったり、あるいは回答しない等住所の調査の努力を怠り、訴訟の進行についてその果たすべき役割を怠っているものであり、そのため、裁判所に対し、不必要な期日を開催させたのみならず、訴訟が遅延し、進行しないものであるから、権利実現の意思を有していないものと認めざるを得ず、民事訴訟法二二八条の法理にしたがい、原告の訴えを終了させるべきであると考えざるを得ない。そして、すでに口頭弁論を経ているから、その方法としては同法二〇二条の趣旨を類推し、訴えを却下するほかないものというべきである。

二  以上のとおり、原告の本件訴えは、いずれも却下することとし、訴訟費用については民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 宮川博史)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例